7月20日 11:36 お客様宅へ到着。
台風による雨風は時折強くなったり、弱くなったり。 放射性物質を含んでいるかもしれない雨に濡れないように、防護服の上に更に雨合羽を着ます。
長袖、長ズボン、防護服、雨合羽、夏では拷問に等しい服装です。 蒸し暑さは相変わらず。
お客様のH様宅入り口でバスを降りますが、その前に東京電力社員の放射線数値測定。
「1.65マイクロシーベルト」
バスを降りる許可が出たので、H様と共にバスを降ります。
実は今回、A4だけでなく、H様所有のポロも搬出しなければなりません。
H様宅入り口から急な坂を30メートル登り、右に曲がると…
ありました A4
余震活動が現在でも続いているので、6月の一時帰宅の際にH様が車庫から出しておいたそうです。
そのときはエンジンがかかったとのこと。
今回もエンジンがかかるといいのですが…
真夏ですが、A4はスタッドレスタイヤを履いたまま、3月11日のままです。
車内が被曝しないようにシートにビニールを被せ、A4乗り込みます。
そして、、、ブレーキを踏みながら、祈るようにエンジンスタートボタンを押します。
「ブルン」と、何事も無かったかのようにエンジンがかかりました。4ヵ月も放置だったのに、さすが(?)アウディ
一方のポロ。 H様がエンジン始動を試みますが、かかりません。
A4と違い、屋外に駐車していたためでしょうか。
トランシーバーでJAFに応援を要請。
JAFによる救援時間は10分。10分過ぎてエンジンがかからなければ、車は持ち出しできません。
11:41 ポロ救援作業開始
バッテリーに直結して始動を試みますが、、、、やはりかかりません。
「完全にカブってますね…。」 JAF隊員
プラグにガソリンが固着しているのでしょう。「キュルキュル」とセルは回るが始動しません。
バッテリーを更にもうひとつ直結し、
再始動を試みますが…
…それでもかかりません。
セルの回る音だけが響きます。
11:46
セルモーターに負担がかかるので、数十秒の静観。
…残り5分以内でエンジンはかかるでしょうか。
左側には、飼い犬の小屋があります。
3月11日、住民には避難指示が出ましたが、ペットは置き去りにされました。
そのまま、原発事故で帰宅することができず、多くのペットや動物達は警戒区域内に取り残されたままです。
取り残された動物達の多くは、おそらく相当な被曝をしているでしょう。
6月の一時帰宅の際には、H様の飼い犬の姿はありませんでした。小屋の鍵は開けられていたそうです。
誰かが開けて逃がしてくれたのでしょうか。
一時帰宅の際に持ち込んだエサは食べた痕跡があるので、近くにいるのかもしれません。或いは、他の動物が食べたのかも。
H様は飼い犬のために新しいエサを持ってきていました。
車の救援活動中、H様は飼い犬の名前を呼んでいましたが、最後まで姿を現すことはありませんでした…
1.162マイクロシーベルト毎時
橫からの雨風では雨合羽も意味がありません。
露出しているのは顔だけ。
異様な雰囲気せいか、自分の五感が研ぎ澄まされているような不思議な感覚です。
何か得体の知れないものに襲われそうな、不安感を感じているからでしょうか。
ポロの始動を試みるJAF隊員。
もう少しでエンジンがかかりそうです。
H.Nanaumi